「一杯」の価値向上へ:ラーメンチェーン注目銘柄の商品開発力

物語コーポレーション

日本の食文化を代表し、国内外で絶大な人気を誇るラーメン。その競争激しい市場において、上場するラーメンチェーン企業各社は、伝統の味を追求しつつも、時代に即応した革新的な戦略で顧客の心をつかみ、成長を目指しています。

一杯のラーメンに込められた情熱は、麺、スープ、タレといった味の探求はもちろんのこと、店舗運営の効率化や顧客体験向上を図るDXの推進にも及んでいます。

本記事では、このようなラーメン業界の最前線で事業を展開する主要な上場企業群に焦点を当てて、各社が持つ独自の特徴や取り組みを紹介していきます。

“丸源ラーメン”をはじめ3つのブランドをもつ「物語コーポレーション」

物語コーポレーションは、多様な飲食店ブランドを展開し、中でもラーメン部門は、同社の国内店舗数の約3割を占める重要な事業です。

同社のラーメン事業は「丸源ラーメン」、「二代目丸源」、「熟成醤油ラーメン きゃべとん」の3ブランドを運営しており、それぞれ独自のコンセプトを持っています。

「熟成醤油」を共通テーマとしつつ、各ブランドがそれぞれの味を追求している点が特徴。他にも糖質50%オフ麺の導入や野菜豊富なメニュー、充実したサイドメニュー、積極的な期間限定商品も提供しています。

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同社は成長戦略のひとつとしてDXを推進。スマートフォンアプリやSNSなど各種デジタルツールを活用したマーケティングに加え、店舗運営ではセルフレジ、タッチパネル注文等を導入し、顧客利便性と生産性の向上に取り組んでいます。

飲食業界の環境変化に対応しつつ、新規出店を継続。既存店においても改装や商品・サービスの強化に取り組み、店舗運営の活性化を図っています。

今後は、引き続きラーメン店舗の出店や商品力の強化に取り組むほか、焼肉部門での「焼きたてのかるび」など新業態の開発・出店を進める方針です。海外事業もアジアを中心に展開しており、米国市場への進出も検討するなど、事業の多角化を図っています。

>> 物語コーポレーションの企業情報

“美味・廉価”の日高屋を運営する「ハイデイ日高」

ハイデイ日高は、手頃な価格で質の高い料理を提供する中華食堂「日高屋」を中核業態とし、直営店中心のチェーン展開を行っています。

創業以来「美味・廉価」を追求し、首都圏の駅前中心から近年は郊外ロードサイドへも出店エリアを拡大、多様な顧客層のニーズに応えています。

「日高屋」の魅力は、420円の「中華そば」や「野菜たっぷりタンメン」といった定番人気メニューに加え、素材にもこだわり改良された「餃子」など、価格以上の価値を提供する商品力にあります。

SNSで反響を呼ぶ期間限定メニューも積極的に投入。これらの商品展開と価格設定は、主要食材の自社工場一括製造によって可能となっています。

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同社はDX推進にも取り組んでおり、新型POSシステム導入によるキャッシュレス化や業務効率化、配膳ロボットや自動発注システムの導入による省人化と店舗運営効率化を進めています。

他にも「日高屋」ブランドの認知度向上を目的とし、SNSや動画サイトを活用したプロモーション活動を行っています。テイクアウト、デリバリー、通販といった中食・内食需要にも対応し、販路の拡充を図る方針です。

ハイデイ日高は、「日高屋」のさらなる進化に加え、ラーメン専門店など新業態開発にも意欲的です。

>> ハイデイ日高の企業情報

プロデュース店モデルで店舗網を拡大「ギフトホールディングス」

ギフトホールディングスは、「最高のラーメンを最高の環境で提供する」という理念のもと、多様なラーメンブランドを展開しています。

同社の事業展開の特徴の一つは、直営店の運営ノウハウを外部オーナーに提供し店舗網を広げる、独自の「プロデュース店モデル」です。

横浜家系「町田商店」、ガッツリ系「豚山」、油そば「元祖油堂」を主力ブランドとし、個性的な複数のブランドを運営しています。麺・タレ・スープを自社工場で開発・製造することで、商品の品質と独自性を追求しています。

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DX推進にも取り組んでおり、多言語表示に対応したキャッシュレス対応券売機の導入や、ライスロボ導入による社内オペレーションの効率化などを実施。店舗でIH機器を取り入れることにより、商品品質の安定化なども図っています。

また、国内複数工場と物流拠点を連携させた戦略的SCM(サプライチェーンマネジメント)により、効率的な後方支援体制を構築しています。

同社は外部環境の変化に対応しつつ、価格戦略や商品開発に注力し既存直営店の運営しており、新規出店も継続しています。海外では米国や中国でブランド展開しており、グローバルな事業展開も検討しています。

>> 急成長するラーメン企業「ギフトホールディングス」味と効率の両立モデルで国内外で拡大中

店舗仕込みと味へのこだわり「丸千代山岡家」

丸千代山岡家は、「ラーメン山岡家」ブランドを中核にラーメンチェーンを全国展開しています。同社は、独自の強みや戦略をもって事業運営を行っています。

その強みの一つは、濃厚な豚骨スープとストレート太麺を特徴とするラーメンの「味へのこだわり」。セントラルキッチン方式を採らず、各店舗でチャーシューやネギなどを仕込み、新規開店時には社長自らがスープの味を認定、定期的なスープ講習会で品質を徹底管理しています。

醤油、塩、味噌といった定番に加え、「ウルトラ激辛ラーメン」などの独自性の高いメニューや、「プレミアム醤油とんこつ」などの地域限定メニュー、「焦がし醤油ラーメン」などの期間限定メニューなど、顧客を飽きさせない多彩なメニューを提供しています。

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他にも、日清食品監修のカップ麺が全国販売されるなど、店舗外でのブランド認知度向上に繋がる活動も見られます。

また、全店舗にキャッシュレス決済対応の券売機の導入したり、「山岡家アプリ」にて定期的にクーポンを配信することで来店頻度を向上させるよう取り組んだりと、DX推進も行っています。

丸千代山岡家は、人材育成と労働環境整備にも注力し、健康経営を推進。CSR活動としてフードバンクへの食材寄付や、ネギを自社生産する農業事業も展開しています。

>> 実は急成長中のラーメンチェーン「丸千代山岡家」が描く300店舗戦略

一風堂のグローバル展開を進める「力の源ホールディングス」

力の源ホールディングスは、ラーメンブランド「一風堂」を核に国内外で事業を展開する企業です。事業は国内店舗運営、海外店舗運営、商品販売の3セグメントで構成されています。

「一風堂」のラーメンは、「白丸元味」「赤丸新味」などが看板商品。伝統製法を基に進化させた滑らかなとんこつスープ、スープとの相性を追求した自家製麺、2種類のチャーシュー、門外不出の秘伝のかえしがその味を支えます。

プラントベースラーメンや地域・季節限定のラーメン、家庭用商品「おうちでIPPUDO」など、多様な商品開発力も特徴です。

同社はグローバル展開にも積極的です。2025年5月時点で既に16カ国・地域に「IPPUDO」ブランドで進出しており、海外店舗数は国内店舗数と同程度になっています

国内では、従来の都市部中心から中商圏やロードサイドへも出店エリアを拡大。従業員の独立を支援する「暖簾分け制度」やM&Aによる事業拡大も行っています。

モバイルオーダーやタブレットオーダーシステム導入といったDXを推進も行っており、店舗オペレーションの効率化、人手不足対応、利益率改善などを実現した実績も持っています。

ラーメン業界の経営環境が変化する中、力の源ホールディングスは「変わらないために、変わり続ける」という理念のもと、商品の品質維持、グローバル展開、DX活用、そして人材を重視する姿勢で、事業の継続的発展に取り組んでいます。

>> 海外売上130億円へ!『一風堂』の非ドミナント展開で成長する力の源ホールディングス

全国151店舗の京都発ラーメンチェーン「魁力屋」

魁力屋は、「京都北白川ラーメン魁力屋」を主力ブランドとし、全国にラーメンチェーンを展開しています。

代表的な商品は「京都背脂醤油ラーメン」で、「あっさりしていてコクがある、飽きのこない、ちょっと懐かしい味わい」をコンセプトとしています。これにより、幅広い層に受け入れられています。

代表的なラーメンに加え、醤油ダレを使用し強火で仕上げる「焼きめし」も提供。期間限定商品も提供し、顧客に新たな味を提案しています。

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同社は、郊外ロードサイドや商業施設フードコートなどを中心に、直営店とフランチャイズを展開し、2024年12月末時点では全国151店舗に拡大しています。

また、人口減少や労働力減少といった社会環境の変化に対応しつつ事業を継続するために、人材育成システムの導入や、多様な人材が活躍できる人事制度の設計を通じて、人材の確保に努めています。

新たな業態開発を目的とした多様な飲食店の展開(から揚げ専門店「からたま屋」「とりサブロー」や、タンメンを主力商品としたラーメン店「KIBARU」など)により、事業多角化も進めています。

>> ”食の総合企業”へ?京都発ラーメン店「魁力屋」、700店舗構想と台湾進出の勝算

「原点回帰」で変革を推進する「幸楽苑」

幸楽苑は、ラーメンチェーン「幸楽苑」を主力ブランドとし、東北地方を中心にドミナント戦略で展開しています。

近年は「原点回帰」を掲げ、大きな経営改革を断行。多角化から転換しラーメン事業へ経営資源を集中させ、財務体質の改善、不採算店の整理、メニュー・組織の刷新により事業基盤の再構築を図っています。持株会社体制も解消し、事業会社として経営効率化と迅速な意思決定を目指しています。

同社の商品戦略の核は「魅力ある商品作り」。

「中華そば」などの定番商品は、麺の改良(中華麺専用小麦粉の共同開発など)により品質向上を図り、「毎日でも食べられる飽きない味」の提供を目指しています。

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加えて、季節感やインパクトを重視した多彩な期間限定商品を投入し、顧客の来店頻度向上を図っています。また、ディナー限定でラーメン以外のメニューも提供するなど、利用価値向上にも努めています。

QSC向上を重視し、調理工程・機器・技術の見直しなどに取り組んでいます。また、独自の調理ロボット導入などにより、調理技術の均一化とオペレーション効率化も図っています。

幸楽苑は、本業であるラーメン事業への集中と、品質向上への取り組み、そして店舗運営の効率化を通じて、外食業界での事業継続と発展を目指しています。

>> あの有名チェーン店に業態転換!?「幸楽苑ホールディングス」